2021.04.26

日本経済情報2021年4月号 コロナ第4波を受けた緊急事態宣言で低迷長期化

4月21日にコロナ新規感染者数が1日5,000人を突破し、「まん延防止等重点措置」の適用地域が拡大するとともに、25日には関西と東京の4都府県を対象に緊急事態宣言が再々発令された。対象期間は5月11日まで。

人の動きは4月に入り抑制されつつあるが、3月まで順調に回復していたため、抑制の程度は今のところ小幅にとどまる。そのことも感染再拡大に至った一因とみられる。

一方で、3月までの人手の回復により、景況感には改善が見られた。景気ウオッチャー調査は、輸出好調な製造業のほか、小売業やレジャー関連で改善し、飲食や衣料品分野でも依然として低水準ながら若干改善した。実際の小売売上高も3月は前年比で大きく改善したが、前年のコロナ・ショックによる落ち込みの反動によるところが大きく、復調とは言えない状況。

輸出は実態を伴って改善している。輸出数量指数は、アジア向け中心に1~3月期も前期比で増加を続けた。ただ、欧米向けは、3月に持ち直したものの、2月までの落ち込みが大きく、1~3月期では減少した。

設備投資は、先行指標から見る限り、機械投資も建設投資も下げ止まりの域を脱せず、今のところ反発力は限定的である。住宅投資は減少傾向から脱していない。

以上を踏まえると、1~3月期のGDP成長率は、個人消費が戻り切らず、設備投資は反動減が見込まれるため、前期比でマイナスとなった可能性が高い。4月以降は緊急事態宣言を受けて個人消費が再び低迷、設備投資の回復も先送りされるとみられ、日本経済は低迷が続く見通し。

東京五輪の開催もコロナ感染第4波の状況次第となる。引き続き景気の先行きはコロナ次第であり、現時点ではワクチン接種の早期実施が最大の景気対策となろう。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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