2024.04.30

景気拡大の阻害要因は円安よりも金利上昇への耐性-日本経済情報2024年4月号

日銀短観3月調査では良好な企業景況感を確認。帝国データバンクの調査でも3月は景況感が改善したが、業績下振れ要因のトップが原材料価格の上昇から人手不足に交代。3月の景気ウオッチャー調査では製造業や小売の一部で景況感が悪化。

実際に3月の小売業界はコンビニが伸び悩み、スーパー売上は伸びたが物価上昇が主因、百貨店は好調ながら自動車販売は不振。ただ、外食は好調で、物販低調・サービス良好の構図は景気ウオッチャー調査の通り。

今後の個人消費を取り巻く環境を展望すると、物価上昇は着実に鈍化する一方、春闘賃上げ率は中小企業も高く、ベースアップ実施企業は増加しており、賃金の上昇は加速する見通し。実質賃金が4~6月期にも前年比プラスに転じるとの当社の見方に沿った動き。今後はマインド改善も追い風となり消費回復が明確となろう。

設備投資は、機械受注が持ち直し底堅さを見せる。短観の設備投資計画では企業の強気な姿勢を確認。今後の堅調拡大への期待高まる。輸出は、インバウンドの拡大続きサービス分野は好調ながら、財は米国向けが減少に転じ、EU向けは減少続くなど低調。住宅投資は価格と金利の上昇により購入者の住宅取得力が低下しており、厳しい状況。

以上の状況を踏まえると、1~3月期の実質GDP成長率は前期比横ばい程度にとどまり、2023年10~12月時点で日銀が概ねゼロ、内閣府が小幅マイナスと推計する需給ギャップは改善せず。

日銀は4月25~26日の金融政策決定会合で、一部に円安への配慮を見込む向きもある中、政策金利の水準も国債買入れ額も現状維持を決定。前回会合以降、物価の「基調的な上昇率」の見通しを変える要素がなかったとし、展望レポートでは「基調的な上昇率」の概念に近いコアコア消費者物価の見通しをほぼ据え置き。

総裁会見では、今後の経済物価情勢が展望レポートで示された姿となれば、2025年度後半頃には政策金利を「中立金利」辺りまで引き上げる可能性が示された。中立金利は1~2%程度とみられ、円安阻止の利上げを求める以前に、日本経済が金利上昇に耐えられるかどうかが重要。

執筆者紹介

主席研究員 宮嵜 浩

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チーフエコノミスト 武田 淳

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副主任研究員 中浜 萌

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