2019.11.21

民主党候補者の団子レースに一石か

社長 秋山勇

大統領選挙投票日まで1年を切った。共和党は現職トランプ大統領の擁立が確実視されるが、国民のトランプ氏への評価は大きく分かれ、何があっても支持する岩盤層が有権者の3割強を占める一方、ほぼ同数は絶対に不支持という構図である。今後トランプ氏が全く新たな方針や政策を打ち出さない限り、同氏の支持率が大きく上がることは見込めないので、次期大統領選の最大のポイントは、民主党候補者がどこまで中立の無党派層等を取り込めるかになる。

今も十数名が乱立している民主党候補者指名競争を一歩リードするのは、急進左派のウォレン、サンダース両上院議員、穏健派のバイデン前副大統領、ブティジェッジ・サウスベンド市長の4人。しかしウォレン、サンダース両氏は富裕層課税など過激な政策を掲げるため、中道からの支持を得にくい。バイデン氏は、安定感はあるものの勢いと新鮮味に欠ける。そこで37歳と若く、アフガン従軍経験があり、LGBT公表と、多様性代表選手のブティジェッジ氏に期待したいのだが、本選においては「ガラスの天井」も立ちはだかる。

そんな決め手のない団子レースに、最近一石が投じられた。3月に出馬見送り宣言をしていた前NY市長で大富豪のブルームバーグ氏が再び立候補に動き出したという。また元マサチューセッツ州知事で黒人のパトリック氏も出馬準備を開始したと噂される。両氏の参戦は、バイデン氏、ブティジェッジ氏の支持基盤である穏健派票を更に割ってしまうという指摘もあるが、左派に偏りつつあった民主党候補の政策案を、より広い支持を得やすい中道寄りにバランスさせる効果もあろう。更に本選の鍵となる浮動票や黒人票動員の呼び水となる可能性も高まる。国民の注目が高まって投票率が上がった選挙は野党が有利になるというセオリーも考えれば、トランプ氏も高枕では眠れないのではないか。

2019年11月18日 金融ファクシミリ新聞「クローズアップ世界経済」掲載コラム)
-------------------------------------------------------------
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、伊藤忠総研が信頼できると判断した情報に基づき作成しておりますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。記載内容は、伊藤忠商事ないしはその関連会社の投資方針と整合的であるとは限りません。