2019.02.19

トランプ大統領の再選プラン


所長 秋山 勇

2月5日、トランプ大統領にとって2度目の一般教書演説が米国連邦議事堂で行われた。予算案をめぐる与野党対立を受け、年末より連邦政府機関は異例の長期閉鎖。恒例行事の一般教書演説すら実現が危ぶまれるほど、米国政治は荒れ模様だ。しかし議事堂の威厳は、対立する政治家すべてに格調を求める。演台に立ったトランプ大統領も、聴衆をあおるいつものスタイルを封印した。

一年前に与党共和党議員で埋め尽くされていた議事堂内の風景は一変した。今年はペロシ下院議長をはじめ、中間選挙で多数党に躍進した民主党議員の厳しい視線の中での演説。トランプ大統領にとってゲームプランの立てにくいアウェーの試合だ。

まず、攻めの得意なトランプ大統領は、好調な経済や雇用、軍用の増強など、すべて自分の実績であると強気で語り、ロシア疑惑捜査へは不満ものぞかせた。しかし一方で女性議員に気を使い、また政府閉鎖の原因となった「国境の壁建設」に話題が移ると、簡易的な構造でも、部分的な設置でも構わないと、譲歩とも取れる姿勢を見せた。何としても公約を実現するための便法であろう。結果にこだわる姿勢を強めたトランプ大統領が目指すのは2020年の再選だ。

トランプ大統領は、昨年同様に、一般教書演説で「Together(ともに)」という言葉を多用した。確かに「ねじれ議会」で政策を進めるには多くの妥協が必要となる。では大統領は本心から対立する人々への協調を呼び掛けたのかと考えると、中々額面通りにも受け取れまい。トランプ大統領は、選挙を前に、民主党が簡単に歩み寄る訳もなかろうと踏んでいるはずだ。されば内政の停滞は否めず、自らの権限で推進できる外交や通商で強硬になるのは目に見えている。なりふり構わないトランプ大統領は、日本にとっても手強い相手となるに違いない。

(2019年2月19日 金融ファクシミリ新聞「クローズアップ世界経済」掲載コラム)

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