2021.02.26
中国経済:規制強化で感染拡大は抑制も、個人消費や生産活動を下押し(1月経済指標及び春節の動き)
1月分の経済指標は発表されないものが多く景気動向の判断は困難だが、把握できる限りでは、一部地域での感染者増加の影響は消費に加え、物流や製造業の生産活動まで波及している可能性が示された。とりわけ消費は春節の移動自粛の影響も加わり、1~3月期の実質GDP成長率を下押しするとみられる。ただ、その後は米国や欧州の景気持ち直しを追い風に輸出が拡大し、通年の成長率は前年比+8%台まで高まる見込み。3月の全人代では、中長期的に緩やかな減速の下での安定成長継続を目指す政府が、どのような具体的目標・政策を打ち出すか注目される。
伊藤忠北京拠点注目のトピック
トピック①:排出権取引市場の拡大で「脱炭素」加速
2月から、全国を対象とした二酸化炭素排出権取引市場の運営が始まった。これまでいくつかの地方では取引市場の実験的取組が始まっていたが、これを全国に拡大し、「脱炭素」社会の実現に向けて弾みがつけられることとなる。当面の対象業種は電力のみであるが徐々に拡大していく見込みである。すでに取り組みが始まっている地方の取引市場では年々取引量が増加しており、政府が厳格な排出削減目標を打ち出す中、今後国内の排出権取引市場はさらに活性化・拡大するとみられる。
トピック②:部門別からみえる半導体産業の実態
中国政府がハイテク産業支援や半導体国産化を進める中で、半導体産業の成長が続いている。かつて産業の柱は高い技術力が不要なパッケージ・テスト部門であったが、現在は付加価値の高い設計部門に移りつつある。ただ、製造部門の技術力は最先端から遅れをとっているほか、材料や製造装置は米国をはじめとした外国への依存が高い。米中ハイテク摩擦の継続が見込まれる中、中国の半導体産業の前途は多難である。