2022.06.17
コロナショック下の家計状況を所得階層別に検証すると、すべての所得階層において世帯所得が底堅く推移したものの、消費支出に回す割合(平均消費性向)が大幅に低下したために、消費支出が落ち込んだことが確認された。また、その平均消費性向について関数推計したところ、コロナ感染拡大や特別給付金といった一時的な要因が最近の消費性向低下に寄与したとの結果が得られた。一連の検証結果をもとに、コロナ禍による行動制約や外出自粛から生じた意図せざるカネの積み上がり、いわゆる「強制貯蓄」の規模を試算すると、勤労者世帯に限れば年間可処分所得の9~14%分、合計で約20兆円に上る。「強制貯蓄」は、日銀が試算(全世帯50兆円)するほどの大きさではなさそうだが、当面の物価高の影響を吸収し、個人消費の腰折れを回避するためのバッファーとなり得る。しかし、そうした役回りを果たしていくほど、「リベンジ消費」に回す分が減るため、今後の消費回復の持続力を弱めてしまうことになろう。