2025.04.04

欧州経済:貿易戦争激化で期待が高まるドイツの財政拡大

トランプ関税によってドイツ経済の低迷が長期化する懸念が高まりつつあるなか、憲法改正案が可決されたことで、ドイツ独自の厳格な財政規律である「債務ブレーキ」が一部緩和。ドイツ経済の低迷や米国の軍事支援縮小への対応として、公共投資と防衛支出の拡大が可能に。
今回の財政規律緩和によって、2025年の実質GDPはドイツで0.3%pt、ユーロ圏で0.1%pt程度押し上げられると試算。トランプ関税発動による景気下押し効果を財政拡大によって一定程度相殺することが可能な見込み。ただし、財政支出の増加だけでは長期的な成長にはつながらないため、投資を通じた生産性向上が重要。ドイツ財政の健全性や財政支出による景気押し上げ効果を勘案すれば、財政規律緩和による財政持続可能性への過度な懸念は不要。
財政規律の緩和を企業は歓迎しており、景況感が改善。一方、公約からの方針転換や憲法改正の手法に国民からは反発の声が上がっており、極右政党への支持が増加。CDUのメルツ党首が国民の支持を維持するには、今回の財政規律の緩和がドイツ経済の持続的な成長に寄与することを示す必要。

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副主任研究員 高野 蒼太

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