2025.05.14

米国経済:米中関税合意で米国の財(モノ)不足は一旦回避か

5月12日、米国と中国はお互いに課していた+100%超の追加関税を大幅に引き下げることに合意した。早期合意の背景には、両国が冷静に交渉を進めるための舞台を整えるという意味合いに加え、米国にとっては、中国からの輸入品の急激な価格上昇や在庫不足を回避する目的があったと考えられる。米国では、昨冬以降、トランプ関税を警戒した各国からの駆け込み輸入により、在庫が積み上がってきた。ただ、トランプ政権は、中国に対する関税引き上げを他国に先駆けて実施したことから、米国の中国からの輸入は既に減少に転じていた。特に消費財に関しては、5月中にも中国からの輸入品の在庫不足が生じる懸念があり、対中関税率を引き下げないと米国経済にとって大きな被害が及ぶことが想定されていた。大幅な関税引き下げが決まったとはいえ、中国に対する追加関税率は多くの品目で+30%と依然高水準である。今後は、対中追加関税の再引き上げを警戒し、中国からの駆け込み輸入が起こる可能性があり、インフレ圧力が続くこととなろう。

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上席主任研究員 髙橋 尚太郎

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