2025.07.25

欧州経済:消費回復ペースが鈍化、英国ではインフレ再燃懸念

ユーロ圏経済は減速傾向にある。個人消費は雇用環境の良好さや物価の安定を背景に回復基調にあるものの、マインドの停滞によって回復ペースは鈍化している。一方、輸出は自動車などの落ち込みが目立つものの、医薬品などの一部品目で関税引き上げ前の駆け込み需要が続いている。今後は、米国との関税交渉の結果次第で製造業が再び苦境に立たされるリスクがある。
ECBは7月24日、8会合ぶりに政策金利の据え置きを決定。関税や地政学の影響を様子見する姿勢。ユーロ圏の景気減速やインフレ圧力低下を踏まえ、ECBは年内にも追加利下げに踏み切ると予想する。
加えて、欧州では記録的猛暑と干ばつが新たな景気下振れリスクに。ライン川の水位低下は製造業のサプライチェーンに大きな影響を及ぼし、回復の兆しを見せ始めたドイツの製造業に水を差すおそれ。
英国経済も減速感が強まる。関税引き上げ前の駆け込み需要が剥落し輸出が鈍化するなか、雇用情勢の悪化とインフレ再燃が個人消費の重石に。エネルギー価格下落による物価押し下げ効果は一巡、水道光熱費上限引き上げや社会保障負担増が上昇圧力となり、インフレ率は当面高止まりする見通し。

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副主任研究員 高野 蒼太

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