2025.08.04

米国経済:7月雇用統計 労働需要の減速基調鮮明、9月利下げを後押し

7月雇用統計では、雇用者数の伸びが7月は+7.3万人と雇用環境改善の目安とされる+1520万人程度と比べて低位にとどまった。また、5月分と6月分の雇用者数の増加幅が大幅に下方修正された。トランプ関税で企業マインドが悪化した結果、関税の影響を受けやすいと考えられる製造業、小売業、卸売業などの労働需要が足元数か月減少傾向にあり、労働需要の減速基調が鮮明となった。一方で、労働需給を示す失業率や、その影響を受ける賃金の伸びには大きな影響が出ていない。ただし、これは、トランプ政権による厳格な移民政策のもと、労働供給の伸びが鈍化することで労働需給がさほど緩和していないためと考えられ、労働市場は健全とは言い難い状況にある。7FOMCで金利が据え置かれたのは、労働市場が悪化リスクを抱えつつも現時点では健全さを維持していることが前提となっていた。この先、インフレ率の上昇が深刻なものでないことを確認できれば、7月雇用統計の結果は、9FOMCの利下げ再開を後押しするものと考えられる。

執筆者紹介

上席主任研究員 髙橋 尚太郎

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