2025.08.25

米国経済:雇用悪化が先行、拭い切れないインフレ圧力(改定見通し)

4~6月期の米国経済は、景気の基調を示す国内民間最終需要が前期比年率で+1.2%と13月期の+1.9%から減速した。7月は、個人消費は大手小売のセールが奏功し底堅さを維持したとみられるが、企業の労働需要は低位で推移し、景気の実勢は弱いと考えられる。一方、物価は、財(モノ)に対するトランプ関税分の価格転嫁が徐々に進む中、サービス価格の伸びも下げ渋る動きが目立った。財への価格転嫁が今後も続くことを踏まえると、少なくとも今年中はインフレ率が上昇し続けることとなろう。FRBは、9FOMCで利下げを再開する公算が大きいが、その後は、これまで通り引き締め的な金利水準を維持しながら、緩やかに利下げを進めることが見込まれる。米国経済は、2025年後半は物価加速により国内需要に下押し圧力がかかり、2025年通年の実質GDP成長率は+1.6%と2024年の+2.8%から大幅に減速すると予想する。2026年以降は、①トランプ関税によるインフレ圧力が2026年央には一巡すること、②FRBの利下げが進むことで金融引き締め度合いが緩和されること、③トランプ追加減税の需要押し上げなどから、巡航速度とされる約+2%に向けて成長率を高めると見込む。米国経済にとっての先行きの最大のリスクは、トランプ大統領の圧力に屈する形などでFRBが過度な利下げを実施し、インフレが再燃することと考える。

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上席主任研究員 髙橋 尚太郎

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