2025.09.26

米国経済:労働市場の悪化続くも、資産効果で個人消費の底堅さ継続

8月の雇用者数は前月対比+2.2万人と低い伸びにとどまり、失業率も緩やかながら上昇した。FRBは労働市場の下振れリスクを警戒し、9FOMCで予防的な利下げを実施、今後も利下げを続けることを示唆した。一方で、小売売上高は、好調であった7月からの反動減はなく、8月も底堅く増加した。トランプ関税の価格転嫁が依然として緩やかであることに加え、堅調な株価上昇による資産効果が消費意欲を高めていると考えられる。米国の株価は、グローバルなAI需要を取り込む大手テック企業を中心に上昇しており、AI関連のデータセンター投資なども伴って、米国の国内需要を支えている。79月期の実質GDP成長率(前期比年率)は、米国経済の巡航速度である+2%程度を維持した可能性が高い。もっとも、米国経済を取り巻く環境は、トランプ関税の影響を受けた雇用情勢の悪化とインフレ率の再上昇という、逆風が続いている。株価の上昇が一服すれば、実質可処分所得の目減りを通じて、個人消費を中心に成長率は+1%程度まで減速すると予想する。

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上席主任研究員 髙橋 尚太郎

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