2025.10.27

米国経済:労働市場の減速が続く中、短期的なリスク増加

米国の9月の労働市場は、ADPなどによる民間統計から減速が続いていることが確認された。個人消費は、株価上昇による資産効果が徐々に弱まる中で、雇用・所得環境の悪化によって減速し始めているとみられる。一方で、9CPIの伸びは、トランプ関税分の価格転嫁の範囲に収まっており、インフレ再燃の懸念は今のところ強まっていない。10FOMCでは、雇用悪化リスクを警戒した2会合連続の利下げが決定される公算が大きく、年内は予防的利下げが続くことが予想される。こうした中、10月入り後は、注視すべきリスクが増加している。101日に始まった政府機関閉鎖は依然終了が見通せず、年末商戦に悪影響が及ぶ可能性を軽視できない。また、米中関係は、ディール成立と対立激化の上下両方のリスクが併存している。先行きの米国経済は、景気のリスクを伴いながら、来春にかけて停滞感が強まると予想する。

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上席主任研究員 髙橋 尚太郎

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