2019.11.01
9月調査の日銀短観では、製造業の景況感が悪化する一方で、非製造業は良好な状態を維持した。一部の業種を除けば「景気が悪い」というほどではなく、あくまでも「良好な状態での減速」という状況。
個人消費は、高額商品を中心に駆け込み需要で押し上げられたが、食品には軽減税率が適用されたため、その範囲は限定的であった。そのため、反動落ちも小さく、また、政府の対策が悪影響を相当緩和しよう。
それでも消費増税により個人消費の一時的な停滞は避けられず、輸出に当面の下支え役を期待せざるを得ない。輸出は9月まで持ち直しの動きが見られ、足元で落ち込んでいる米国向けも持ち直しが期待でき、当面の景気下支え役として期待できそうである。ただ、米中貿易摩擦が一段と悪化するなど海外情勢の行方次第では、その役割を果たし得ない。
また、設備投資は、先行指標を見る限り、景気を底上げするほどの力強さはなく、先行きを不透明にする要因が多いため、むしろ今後は盛り上がりに欠ける状況が見込まれる。
こうした足元の状況を踏まえると、7~9月期の実質GDP成長率は概ね横ばいにとどまった模様である。個人消費は駆け込み需要をサービスの反動落ちが相殺、設備投資や公共投資の増加は続く一方で、輸出の落ち込みも続くためである。
成長ペースの鈍化は、需給ギャップの縮小を通じて物価上昇圧力を低下させる。消費増税後は一旦、景気の停滞が避けられないため、需給ギャップがマイナスに転じる可能性もあろう。早期の潜在成長率を超える成長ペースへの回復が望まれるが、そのカギを握るのは輸出であり、当面は海外情勢頼みの状況が続きそうである。