2020.08.21
タイの4~6月期の実質GDP成長率は、インバウンド需要の消滅と個人消費の大幅な減少を主因に、1997~1998年のアジア通貨危機時以来の落ち込みとなった。新型コロナ感染拡大が収束に向かったことを受けて、足元では活動・移動制限がほぼ解除され、国内の生産活動は正常化しつつある。ただし、同国経済の柱の一つであるインバウンド需要の正常化は見通せず、景気悪化の長期化懸念から個人・企業のマインド回復も鈍い。そのため、今後は、2021年以降に再び世界的な第2波に見舞われないという前提のもと、当面は大規模な経済対策で景気を下支えしつつ、2021年初旬頃からインバウンド需要の持ち直しに伴って景気回復が本格化すると見込む。他方で、政権内部の勢力争いで経済政策を担ってきたソムキット氏が失脚、TPP参加の不透明感が高まるなど、政権内で軍出身者の勢力が増し保守的なスタンスが強まりつつあり、産業高度化を通じた中長期的な成長パスが描きづらい状況になっていることには注意が必要である。