2022.04.25
ドル円相場は日米金利差の拡大や日本の貿易収支の悪化を背景に1ドル=130円近くまで円安が進行。日本経済にとって円安はプラスなのかマイナスなのか見極めが必要な状況に。
極めて単純化すれば、円安のメリットは輸出の増加による企業利益の拡大である。一方でデメリットは物価上昇による家計所得や企業利益の目減りであり、その額は輸入の増加分と等しい。すなわち、輸出と輸入が同規模であれば円安はメリットとデメリットが相殺し中立、輸入が上回る貿易赤字状態であればデメリットが勝り、円安は悪となる。
今後も鉱物性燃料の価格は高止まり、貿易赤字の状態が少なくとも1~2年は続き、ドル円相場も円安地合いが継続しよう。ただし、日米金利差の拡大余地は限られるため、円安進行の勢いは弱まるとみられる。
国内に目を転じると、3月から4月にかけてコロナ新規感染者数は減少、まん延防止等重点措置が全国で解除されたことから、人の動きは回復しつつある。ただ、4月中旬にかけて回復の動きに陰りも見られる。
人出の回復を受けて、3月は家計関連分野の業界で景況感が大幅に改善、個人消費が回復していたことを示した。一方、輸出は3月にかけて下げ止まるも、先行きはウクライナ情勢や中国のコロナ感染再拡大により停滞が懸念される状況。設備投資は、機械投資に計画先送りの動きが見られるも、建設投資はオフィスビルを除き拡大傾向。
一部の需要に弱さが見られる背景には物価の上昇があろう。輸入物価は極めて高い伸びが続き、企業物価は川下まで価格転嫁が進み高止まっている。消費者物価も携帯料金による押し下げの大部分が剥落する4月には前年同月比2%以上へ伸びが高まり、その後、夏場にかけては一旦鈍化するも10月には再び2%超となる見込み。ただ、安定した上昇基調と判断するには賃金上昇やサービス分野を含む幅広い価格上昇が必要。
そうした中、企業の販売価格見通しが調査開始以来の高い伸びを記録したことは、価格転嫁行動の変化を期待させる動き。4月27~28日の金融政策決定会合は、引き続き現状維持が見込まれるが、こうした変化が消費者物価見通しにどのように反映されるか注目したい。