2023.03.09

日本経済:物価上昇は消費支出にマイナスの影響、 物価上昇の鈍化と強制貯蓄の取崩しで消費の拡大続く

物価変動は消費性向(所得に占める消費の割合)の変化を通じて消費支出に影響を与える。消費性向の変動要因を分析すると、物価の上昇は消費性向の低下につながり、①物価上昇の影響は選択的消費支出により強く表れること、②エネルギー物価よりもそれ以外の物価の影響が大きいこと、③高所得者層ほど物価変動の影響が大きく、低所得者層では基礎的消費支出への影響もあることが示された。今後は、2023年度後半にかけて物価上昇が鈍化し消費性向は押し上げられ、強制貯蓄の取崩しが進むことで消費支出も増加することが見込まれる。消費に慎重な姿勢が見られる低所得者層でも、パートタイム労働者の賃金上昇が加速しつつあるため、物価上昇の鈍化が消費性向の上昇につながりやすくなるだろう。さらに、今春闘では企業の賃上げに対する前向きな姿勢が目立っている。消費支出は、所得の増加と消費性向の上昇により拡大が続くと見込まれる。

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副主任研究員 中浜 萌

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