2019.12.27

中国経済情報2019年12月号

米中摩擦一服で持ち直すも6%割れを許容(11月主要経済指標)

米中貿易協議が一応の合意に至り、当面の不透明さは払拭されたため、中国経済は輸出の復調や設備投資の再開をきっかけに前向きの動きを取り戻そう。ただ、中央経済工作会議が示した2020年の姿は安定成長を目指しながらも減速を許容しており、中国経済は一旦持ち直したあと、構造改革を進めるため持続可能なペースを目指して再び緩やかに減速していくとみられる。

10分でわかる2020年の中国の経済政策方針-2019年12月の中央経済工作会議の概要-

12月中旬に開催された中央経済工作会議で、2020年の経済政策の方向性が決定された。財政政策は拡大、金融政策は緩和的な政策スタンスをそれぞれ維持しつつ、成長率は緩やかな減速を許容する姿勢を示した。個別政策では、「2020年に小康社会を全面的に実現する目標」を背景に、貧困層の救済を重点に置いた社会保障政策の充実化が重要課題に掲げられた。より具体的な方針・政策は来年3月の全人代で発表される。

伊藤忠中国拠点注目のトピック

政府の後押しで発展が期待されるFCV(燃料電池車)産業

中国では水素エネルギーを利用した燃料電池車(FCV)が注目を集めている。政府は補助金を支給し、バスや商用車のFCV化や水素ステーション(燃料充填設備)の設置を進めている。水素ステーションの建設には費用がかかるという難点はあるものの、FCVは、環境への負荷がないことに加えて、EV(電気自動車)と比べて充填時間が短く走行距離が長いなどの利点をもつ。そのため、EVと棲み分けしながら中長期的には発展が期待される分野と言える。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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