2020.02.28

中国経済情報2020年2月号

新型コロナウィルスで大幅減速不可避の中国経済(1月経済指標)

1月は貿易統計の発表も見送られ、経済指標から景気動向を把握することは困難であるが、PMI指数は新型コロナウィルスの感染拡大以前に景気が停滞していた可能性を示唆、中国経済は米中摩擦の一時中断による持ち直しの動きは確認できないまま新たな悪材料に見舞われた格好。また、今後の感染拡大如何によらず1~3月期のGDPは数%単位で減少するとみられる。

BAT3社の投資戦略を読み解く

―新興企業の追い上げに対抗して、新たな収益基盤の強化とエコシステムの拡充を急ぐ

BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)はICT分野のプラットフォーマーとして、中国社会のデジタル化、デジタルイノベーションをけん引してきた。3社はこれまで、収益基盤の維持・強化とエコシステムの拡充を目的に、国内外で積極的な投資を実行してきたが、近年「滴滴出行」や「美団点評」などネクストBATと呼ばれる新興企業の追い上げにさらされる中、新たな成長分野を求めて投資戦略を練り直している。祖業の違いからコア事業が異なるにもかかわらず、3社の投資先はAI・ハードウェア、企業サービスなど高成長が期待される領域に集中する傾向が強まっている。3社とも強い危機感を抱きながら、新たな事業の柱を探っており、ここ2、3年ではとりわけヘルスケア分野に高い関心を示している。

米中経済摩擦の最前線:米中のはざまで翻弄される台湾企業

台湾と中国の電子機器・部品産業は、相互に依存しながら発展してきたが、米中経済摩擦によって状況は変化しつつある。とりわけ米国政府は、最先端技術を持つ台湾の半導体企業TSMCによるHuaweiへの半導体販売を阻む姿勢を強めている。TSMCは中国市場への進出を加速しているものの、顧客の大半は米国企業であるほか、半導体製造装置は米国企業に依存しているため、今後米国政府がHuaweiとの取引禁止規制を強化した場合、TSMCはその方針に従わざるを得ないだろう。

なぜ大阪は中国人旅行者に人気なのか

中国人旅行者の中で大阪の人気が高い。現地調査も踏まえると、それには、①街の雰囲気の類似性、②豊富な観光資源、③直行便の多さ、という要因が指摘できる。海外旅行ブームが続く中で、今後も大阪への中国人旅行者数の拡大は見込まれる。ただし、インバウンド拡大を過剰に見積もった宿泊施設の供給過剰が懸念されるほか、短期的には「新型コロナウィルス肺炎」の感染拡大の影響に注意が必要である。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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主任研究員 趙 瑋 琳(チョウ イーリン)

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