2020.06.29

中国経済情報2020年6月号

内需主導で回復の範囲を広げる中国経済(5月指標)

5月の主要経済指標は、輸出の低迷が続く中、中国経済が内需主導で順調に持ち直していることを示唆。財政支出の拡大や金融緩和を受けたインフラ関連投資や不動産投資の拡大に加え、個人消費も自動車販売にまで裾野を広げ着実に回復に向かっている。ただ、北京市で集団感染が発生するなど、コロナ感染第2波懸念は払拭できず、現時点で経済正常化ペースの加速は期待薄。

拡大する米中摩擦の4つの注目点

米中対立は、トランプ政権誕生以降、貿易摩擦から技術覇権に中心テーマを移しつつ激化、今年に入り香港問題や新型コロナウイルス、ハイテク技術流出防止の強化、米資本市場からの中国企業排除など、戦線は急速に拡大している。米国は大統領選を控え、中国に輸入の拡大を迫る一方でハイテク分野の輸出規制を強化、香港問題でも圧力をかけている。一方の中国は、コロナ抑制には成功したものの未だ景気回復には至らず、雇用は悪化、所得倍増計画の達成も疑問視され、香港問題が対外関係悪化に波及するなど、防戦一方の状況。今後を展望する上では、ハイテク分野、香港、台湾、バイデンの対中観が注目点となろう。

中国の「618セール」から見えたEC業界の地殻変動

中国のEC業界では、上半期のビッグイベントとして「618セール」が大きな盛り上げりを見せた。大手のアリババ、京東と新興勢力のPDDは好調な実績を上げており、EC業界の御三家が確立。ユーザー争奪戦が一層激化していく中で、地方市場の開拓と先端技術の活用が勝負のカギを握る。ライブECブームが続き、モノの売り方と買い方がダイナミックに変化している。

伊藤忠中国拠点注目のトピック

「コンビニの砂漠」北京で急拡大するコンビニチェーン市場

北京のコンビニ市場は、政府の規制などを背景に南部の主要都市に比べて規模が小さいが、市民の生活の質向上や夜間経済振興のため、政府は店舗数の拡大を後押ししている。コンビニチェーン企業にとっては、とりわけ店舗が手薄な住宅地で地域のニーズをうまく取り入れた店舗展開がカギとなるだろう。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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主任研究員 趙 瑋 琳(チョウ イーリン)

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