2021.08.24

日本経済情報2021年8月号 本格回復は今秋以降に持ち越し(2023年までの経済見通し)

コロナ第4波の一巡により6月に個人消費が一旦持ち直し、2021年4~6月期の成長率は前期比で比較的大きなプラス成長を記録した。設備投資も非製造業にまで復調の動きが広がり、住宅投資は持ち直し傾向が続いた。輸出こそ米中向けを中心に増勢が一服したが、日本経済は国内民間需要を中心に本格回復に向けた準備を整えつつあった。

景気持ち直しの動きは7月にかけても続いたが、やや先走り過ぎた経済活動の活発化が、コロナ感染第5波の爆発的な拡大を招いた。その結果、政府は緊急事態宣言の延長・対象の大幅な拡大に踏み切り、その実施に先んじて人の動きは8月半ば頃から抑制傾向となっている。こうした状況を踏まえると、7~9月期の成長率は前期比で横ばい程度にとどまり、景気はひとまず停滞感を強めることとなろう。

ただ、ワクチン接種が進みコロナの影響が和らぐと期待される10月以降、個人消費は本格的に回復、これまで抑制されてきた反動もあり、4%近い伸びが2年間続くと予想する。海外景気もワクチン効果により先進国を中心に回復が続くとみられ、それに伴い輸出も徐々に増勢を取り戻そう。これらの動きが設備投資の本格回復を後押しする。

以上の結果、2021年度の成長率は前年比+3.3%と3年ぶりのプラスに転じ、2022年度も+2.9%と高い成長が見込まれる。ただ、2023年には巡航速度に近い1%台まで減速、需給ギャップの解消は2023年半ば頃となり、消費者物価上昇率はせいぜい1%程度までにとどまろう。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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