2021.10.28

日本経済情報2021年10月号 コロナ収束と経済対策により回復に向けて再スタート

8月下旬には新規感染者数が1日2万5千人を超えるまで拡大したコロナ感染第5波であったが、その後は予想外のスピードで収束。主因の一つがワクチン接種の進捗であることは疑いの余地なし。

加えて理由を挙げるとすれば、人出回復の緩慢さ。google調べによると、消費活動と相関が高い「小売・娯楽」施設付近などの人出は9月下旬の連休時こそ大きく回復したが、感染者急減に比べ総じて緩慢な動き。

こうした動きを反映し、個人消費は9月も低迷。小売販売は自動車販売の大幅落ち込みもあり、全体で8月の落ち込みを取り返せず。部品不足による自動車生産の遅れが消費回復の遅れの一因に。

輸出は9月も減少が続き、7~9月期では前期比で大幅減。消費同様、自動車生産の落ち込みが響いたほか、欧米など需要地でのコロナ感染再拡大も影響した模様。

設備投資は消費や輸出の停滞などから再び様子見姿勢強まる。住宅投資も貸家や分譲で増勢一服。

10月4日に発足した岸田政権は、自民党総裁選の論功行賞的な人事が目立つと指摘されるが、世代交代も一部で進んでおり現実的な布陣。岸田首相が示した「新しい資本主義」は成長と分配の好循環を目指すものであるが、今のところ支出面ばかりが語られ、財源については不透明。今後の議論が待たれるところ。

上記の景気の現状を踏まえると、11月15日に発表される7~9月期の実質GDP成長率は前期比でマイナスとなる見込み。ただ、10~12月期以降は国内外のコロナ収束を受けてプラス成長を取り戻すと予想。以降も感染再拡大の影響を抑え込めれば、経済対策の効果も加わって、日本経済はようやく本格的な回復に向かおう。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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