2025.12.24

日本経済2025年の回顧と2026年の展望-日本経済情報2025年12月号

2025年の日本経済は、米国の想定以上に乱暴な関税政策の影響により金融政策や為替相場、輸出を中心に予想外の展開となった。物価も想定以上に上昇が加速したが、個人消費は賃金上昇や雇用拡大、低価格品シフト、資産効果により底堅く推移した。想定以上の物価上昇は、価格転嫁の進展によるところが大きく、企業業績は非製造業を中心に改善、製造業ではトランプ関税による下押しがあったものの、業績改善が設備投資の拡大につながった。その結果、2025年の実質GDP成長率は潜在成長率を上回る前年比1.2%程度に高まり、需給ギャップは大幅に縮小した。経済の実態も、賃金が上昇し、企業はコスト増の価格転嫁を進め利益を確保、次の賃上げや設備投資拡大に備えるという、インフレ経済の好循環が見られており、日本経済はデフレを脱却し正常化しつつある。

2026年を展望するうえで重要な点は、関税政策を含めた米国経済の先行きと、これまでの景気を支えてきた内需の二本柱である個人消費と設備投資の拡大が続くのか、であろう。トランプ関税については未だ不確実性を残しているが、それ以前に米国経済に減速の兆しが見られ、復調は来春以降と見込まれるため、それまでの間、日本の輸出は停滞気味に推移しよう。

ただ、個人消費は、価格転嫁の一巡に加え、原油安や政府の物価高対策により物価上昇が鈍化すること、好調な企業業績や労働市場のひっ迫により来年の春闘でも5%を超える賃上げが期待されることから、実質賃金の上昇により拡大が続くこう。設備投資も、設備に不足感が見られるなかで、企業は強気な投資計画を維持しており、堅調な業績を背景に拡大が見込まれる。さらに、政府の経済対策が、必要な物価高対策の規模を大きく上回り需要刺激的であることも加わり、2026年の日本経済は大きな外的ショックがない限り堅調な拡大を続け、需給ギャップは解消、物価の上昇が企業業績の改善をもたらし、賃上げと投資拡大につながるインフレ経済が定着、正常化が進むことになろう。

金融政策は中立金利に至るまで半年に1回程度の利上げを継続すると予想するが、拡張的な財政政策の下で金融政策の正常化が遅れることがリスクであり、持続的な成長のため適切な財政金融政策が望まれる。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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主席研究員 武内 浩二

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副主任研究員 高野 蒼太

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