2020.10.06

2030年までに中国に代わる「新・世界の工場」は登場するか

米中対立の長期化が予想される中、企業経営にとってグローバル・サプライチェーンの見直しは重要な課題となっている。2018年以降、貿易摩擦が深刻化した際には追加関税を課された製品について輸出競争力の高い国によって中国製品を代替する動きがみられた。今後も賃金水準や経済の成長余地、産業集積の状況などに応じて、製品ごとに部分的な生産代替が行われる可能性が高い。例えば、電気機械ならばマレーシア、フィリピン、メキシコなど、繊維製品ならばベトナム、インドネシア、インドなどが有力候補となり得る。

ただ、中国の対米輸出の規模は大きく、全ての製品分野について速やかに代替するキャパシティを持った国は存在しない。また、「世界の市場」としての役割が期待されることや、産業によっては品質・技術面でのアドバンテージが依然として大きいことなど、中国に軸足を置いたサプライチェーンを維持するメリットも多く、生産代替の動きは緩慢なものに留まる見込み。

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副主任研究員 岩坂 英美

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