2020.11.30

中国経済情報2020年11月号

中国経済:着実な回復続くが先行き懸念もあり、「双循環」の具体策待ち(10月経済指標)

10月の主要経済指標は、中国経済が着実に回復に向かっていることを示した。輸出や固定資産投資は一段と伸びを高め、小売販売も外食がようやく前年比プラスに転じ、遅れながらも改善を続けている。ただ、固定資産投資や輸出の先行きには懸念材料も出始めた。そうした中、政府は次期5ヵ年計画において、ペースを落としつつ「双循環」で持続的成長を目指す方針を示したが、消費主導の成長は既に「新常態」で示されたものであり、解決すべき課題も同じである。

「五中全会」の政策方針と2035年の中国経済

10月末に開催された五中全会では、2021~25年までの中期政策方針と2035年までの長期目標の骨子が公表された。内需に軸足を置きつつ外需との両輪で持続可能な経済成長を目指すキーワード「双循環」が盛り込まれたほか、2035年に向けて、国民生活の質のさらなる向上と富の公正な分配を目指す姿勢が打ち出された。また、その目安として「一人当たりGDPの中等先進国レベルへの引上げ」や「経済規模倍増」を目指すことも明記された。経済成長減速や米中経済摩擦の長期化が見込まれる中で、党政府は技術革新促進による産業高度化や生産性の向上を強く進める方針で、それらを前提とすると2035年までにこれら経済目標は達成される可能性は高い。

伊藤忠北京拠点注目のトピック

第三回輸入博開催、「環境」「健康」分野の注目高い

3回目の開催となる上海輸入博は、新型コロナの影響で昨年より参加企業や入場者の数は減少したものの成約額は増加し、日本や米国を中心とした外資企業の中国市場への関心の高さが窺われた。展示分野では、廃棄した衣料品を再利用したアパレル関連商品や、環境への負荷が小さい燃料電池車のような環境分野のほか、健康・生活分野では植物由来の「人工肉」が、多くの来場者の注目を集めていた。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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