2021.04.20

ASEAN経済:米中向け輸出が回復を牽引、コロナ長期化が消費を抑制

伊藤忠商事のASEAN8か国および南アジア3か国の現地法人/駐在員事務所を対象に、2021年3月時点の景況感アンケート調査を実施。ASEAN地域全体としての景況感は引き続き「やや悪い」状態にある。ただし、前回調査(2020年9月)との比較で景況感の改善した数が悪化した数を上回り、景気の底打ち感が出始めていることが窺える。特に、ベトナムは、唯一「やや良好」との回答で、他国との差が顕著である。しかしながら、ASEAN地域全体の新型コロナ感染者数が高止まりする中で、個人消費の自律的回復に弾みがつかず、景気回復ペースは緩やかな状況が続く。先行きは、米中向け輸出が景気回復をけん引し、企業マインド改善と金融緩和の継続から、設備投資も持ち直すだろう。また、コロナ禍で先送りされてきたインフラ整備の正常化も景気回復を支えるとみられる。この間、個人消費は、政府による消費支援策に支えられてゆっくりと回復を続け、2021年秋~冬にはコロナ前の水準に達する見込み。ASEAN主要国合計のGDPは、2021年下期にはコロナ前(2019年)の水準に回帰し、2021年通年の成長率は前年比+5.3%で着地すると予想する。

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上席主任研究員 髙橋 尚太郎

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