2021.09.24

タイ経済:年内はプラス成長を確保、来年はインバウンド回復が視野に

タイでは、夏場にかけて、他国と同様にデルタ株の爆発的な流行に見舞われた。このため、活動・移動制限が強化され、個人消費は再び減少、堅調であった財(モノ)の輸出も、海外需要の鈍化と工場休止などの供給制約が重なったことで増加幅が縮小した。しかしながら、コロナ感染拡大は8月中旬にピークアウトし、9月以降は活動・移動制限が緩和され始めている。また、苦戦していたコロナワクチンの調達も、年内に国民の7割が接種済みとなる量を確保した模様。先行きは、個人消費がゆっくりと回復に向かい、2021年の実質GDPは前年比でプラスを確保すると予想する。2022年には、内外でワクチン接種が十分に進み、国際間の人の移動制限が徐々に緩和することで、コロナ前にタイ経済の約1割を占めていたインバウンド需要の回復が進む見通し。ただし、タイへの最多の旅行者数を抱える中国は、出入国規制の緩和に慎重姿勢であり、中国人観光客の回復は2022年夏ごろになる見込み。タイ経済がコロナ前の水準に回帰するのは2023年入り後になるとみられる。

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上席主任研究員 髙橋 尚太郎

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