2021.11.02

豪州経済:年末にかけて内需底打ち、中国による経済制裁の影響限定的

豪州では、6月下旬以降にデルタ株の感染拡大に見舞われ、夏場にかけて個人消費を中心に経済は大幅に下押しされた。こうした中、豪州政府は、感染拡大が続いていた8月下旬にも経済活動再開を重視する方針に切り替え、足元ではワクチン接種が進む大都市から制限が緩和され始めている。先行きは、コロナの感染拡大が11月にはピークアウトするという前提で、政府の減税策も後押しに、年末にかけて個人消費が復調する見込み。国内需要の回復で企業マインドは改善し、堅調な輸出を背景に、企業の設備投資も持ち直すだろう。最大の輸出先である中国による経済制裁は、主要輸出品目である鉄鉱石が対象外であるほか、制裁対象の石炭なども他の輸出先を確保でき、豪州経済への影響は限定的とみられる。中長期的には、脆弱性をはらむ対中経済依存からの脱却を図るため、中国以外の貿易相手先との関係強化を図るなどの取り組みが続くだろう。

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上席主任研究員 髙橋 尚太郎

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