2023.02.27

日銀は金融緩和を継続し景気回復を阻害せず(改定見通し)-日本経済情報2023年2月号

日銀は総裁・副総裁の任期満了に伴い4月から新体制に移行する。植田新総裁候補のこれまでの発言などを踏まえると、新体制では政策金利を短期に一本化、マイナス金利から脱し、市場の需給動向に頑なに抗うことなく専ら時間軸効果によってイールド・カーブを望ましい姿に誘導する形に移行していくのではないかと考えられる。

ただ、それは現行の金融政策の枠組みの有効性を検証したうえで段階的に進められるだろう。まずは長期金利の目標を廃止し、現在のイールド・カーブの歪を修正、物価動向を見極めながら、あくまでも緩和的な状態のままマイナス金利の廃止に進むと予想する。

こうした金融政策を前提として、景気の先行きを展望すると、足元で景気回復の勢いがやや鈍っている点は、今後の回復余地を大きくしたという意味でポジティブとも言え、インバウンド需要が順調に回復していることは前向きに捉えられよう。

一方で、設備投資は特に製造業において先行指標の悪化が懸念材料として浮上している。海外景気の減速を受けた財輸出の減少やサービス分野の回復ペースの鈍化が背景とみられ、これらの動きには注視が必要。ただ、財輸出は中国向けの回復が期待され、サービス分野においても物価上昇のピークアウトや賃金の上昇が今後の追い風となろう。金融緩和が継続されることも安心材料となり、景気は回復傾向を維持する見通し。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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副主任研究員 中浜 萌

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