2024.11.25

米国経済:来年以降、トランプ政策実現で不確実性高まる(改定見通し)

米国経済は79月期には国内需要に支えられて堅調に拡大した。10月入り後も、景気の柱である個人消費が堅調さを維持しているとみられ、大幅な景気悪化の兆しは窺えない。ただ、10月の雇用者数の伸びは、大型ハリケーンの影響などを差し引いても鈍化した可能性が高く、労働市場の冷え込みが続いていると考えられる。今後は、可処分所得の伸び鈍化が続くもとで、個人消費の増勢は弱まり、経済は緩やかに減速すると予想する。こうした中、115日の大統領選で共和党のトランプ前大統領が勝利し、同日の上下両院の議会選も共和党が制した。来年以降、トランプ氏が掲げる、①関税引き上げ、②移民政策の厳格化、③減税など、インフレ圧力となり得る政策が実現する可能性が高まった。FRBは、利下げ実施に対してやや慎重な姿勢を示すことが多くなっており、堅調な景気のみならず、来年以降の物価動向の不確実性を踏まえたものである可能性がある。2025年は、移民政策の厳格化、中国に対する輸入関税の引き上げが段階的に実施され、インフレ圧力が生じるとともに金利の低下余地が限られることで、景気減速が続くと予想する。その後、安定した政権基盤を背景に、減税策の多くが2025年末に成立するとの想定しのもとで、2026年ごろからは需要が押し上げられ、景気は回復に向かうと見込む。以上の見通しは、現状考え得る情報から暫定的に置いた前提に基づいており、不確実性が高い。トランプ次期政権の政策動向を踏まえて、逐次見通しを修正していく必要がある。

執筆者紹介

上席主任研究員 髙橋 尚太郎

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