2025.04.28

トランプ関税の悪影響を円高・原油安が緩和(改定見通し)-日本経済情報2025年4月号

トランプ関税懸念が広がる以前の3月までにおいても、景気ウォッチャー調査の景況感は悪化。インバウンド需要の息切れや物価上昇によるマインド悪化を背景に、個人消費関連で特に悪化が目立つ。日銀短観の企業景況感は業種や規模でまちまちだが全体で見れば横ばい。1~3月のGDP成長率は前期比で小幅なプラスにとどまった模様。

4月2日に全容が示されたトランプ関税は、「不法移民・合成麻薬対策」「相互関税」「商品別関税」の3つに大別され、日本の相互関税は10%の共通部分を含めた24%となったが、90日間の猶予期間中は10%のみが課税される。ただ、鉄鋼・アルミ製品や自動車(含む部品)に対する商品別関税の対象は、相互関税ではなく25%の関税が課せられる。これらにより日本の輸出は米国向けが約10%(全体では2%程度)減少し、GDPを0.4%押し下げる。さらに、トランプ関税による世界経済の悪化に伴う輸出減や、これらの内需への波及も景気の下押し要因となる。

一方で、円安の修正や原油価格の下落は、輸入コストの減少や物価上昇の抑制を通じて企業業績を押し上げ、個人消費を後押しする。加えて、対米・対中輸出を代替する「漁夫の利」もある程度は見込まれる。以上を合計するとトランプ関税による下押しはGDP比0.3%程度となろう。

以上を踏まえ、2025年度の成長率予想を先月の前年比+1.1%から+0.8%へ下方修正する。それでも、政府や日銀が試算する潜在成長率を上回っており、景気の後退局面入りは避けられよう。そのため、半年に1回程度の緩やかなペースでの利上げは継続可能であろう。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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主席研究員 宮嵜 浩

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上席主任研究員 藤本 啓

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