2025.07.28

トランプ関税で一時停滞も後退には至らず(改定見通し)-日本経済情報2025年7月号

日米関税交渉は、相互関税を15%にとどめ、自動車の追加関税を半減で一応の決着。3月以降の関税引き上げに対して企業は、輸出価格の引き下げにより関税負担の一部を吸収、輸出量を維持してきた。そうしたこともあり、6月調査の日銀短観や景気ウオッチャー調査では企業景況感の目立った悪化は確認されず。一方、物価上昇による影響を主因に個人消費関連分野の一部に景況感の悪化が確認された。

こうした現状を踏まえると、今後の日本経済を見通すうえでは、トランプ関税が与える影響に加え、物価の先行きを踏まえた個人消費の行方が重要なポイントとなる。

トランプ関税の影響は、関税率の上昇により対米輸出が減少するだけでなく、他国の景気を悪化させることで日本の輸出が減少する面もある。これらの合計で日本のGDPは0.4%押し下げられる見込み。また、関税の影響を吸収するための輸出価格引き下げは企業業績の悪化を通じて設備投資を押し下げ、GDPを0.2%減少させる。ただ、今のところ賃上げや消費者マインドへの目立った影響はなく、人手不足から雇用への影響も限定的とみられ、個人消費の回復は阻害されない見込み。

以上の関税の影響により、7~9月期以降は輸出が減少、日本経済は2025年度後半には停滞、通年の成長率は前年比+0.7%にとどまると予想。ただし、個人消費の底堅さから景気が後退局面入りすることはなく、2026年度には関税の影響が一巡、輸出や設備投資が再拡大し、日本経済は正常化に向けた回復の動きを再開しよう。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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主席研究員 宮嵜 浩

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副主任研究員 高野 蒼太

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