2025.08.27

トランプ関税を乗り越え回復基調を維持(改定見通し)-日本経済情報2025年8月号

4~6月期の実質GDP成長率は予想を上回る前期比プラス成長だった。同時に1~3月期がプラス成長に上方修正されたため、都合5四半期連続のプラス成長となり、景気は思いのほか底堅く推移していたことが示された。国内需要が底堅いことは確かであるが、トランプ関税実施にもかかわらず輸出が増勢を維持していることも大きい。

7月は個人消費がまだら模様、対米輸出の減少が続くなどトランプ関税の影響が本格化しつつあるため、景況感は悪化している。輸出企業は対米輸出数量の落ち込みを緩和させるべく価格を引き下げているが、今後は8月の相互関税引き上げに加え、関税引き上げ前の駆け込み輸出の反動も見込まれるため、輸出の落ち込みは避けられない。

ただ、輸出企業の業績悪化が設備投資や雇用・賃金を通じて個人消費に与える影響は一時的ないしは限定的であろう。特に雇用・賃金については、人手不足極まる中で企業の雇用意欲は旺盛、労働力供給の先細りもあり労働需給のひっ迫状態は解消せず、高い賃金上昇圧力が続こう。

さらに、物価上昇はコメ価格が頭打ちし、円高・原油安による輸入品価格の下落もあって鈍化するとみられ、実質所得の改善が個人消費の回復を後押ししよう。当面はトランプ関税により輸出が下押しされ、設備投資は一時的に停滞、景気は足踏みしようが、2026年入り後は輸出が持ち直し、設備投資も復調、景気は再拡大に向かおう。2025年度の実質GDP成長率は前年比+0.8%にとどまるが、2026年度には1%程度まで高まり、2027年度も潜在成長率程度を維持しよう。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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主席研究員 宮嵜 浩

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副主任研究員 高野 蒼太

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