2020.03.27

日本経済情報2020年3月号 改定経済見通し~新型コロナウイルスの影響を踏まえて

日本経済は、消費増税直後となる10~12月期のマイナス幅が前期比▲1.8%(年率▲7.1%)に下方修正され、前回の消費増税直後に匹敵する大幅なマイナスとなった。消費増税による影響は前回ほどではなかったものの、天候不順が個人消費をさらに下押ししたこと、輸出が米中貿易摩擦の影響もあって伸び悩んだところに、設備投資の循環的なピークアウトが重なったことが、景気の落ち込みを大きくした。消費増税直前も事実上はマイナス成長だったとみられ、景気動向指数から見ると、2019年5月を山とする景気後退局面に入っている可能性が高い。

そうした中、年初から2月にかけては、小売販売に底堅さも見られ、輸出が緩やかに持ち直すなど、米中摩擦が一時中断する中で、需要動向はまずまずだった。しかしながら、新型コロナウイルスの影響が2月から3月にかけて日増しに強まり、景気は暗転した。

今後の景気を見通す上で、新型コロナウイルスの影響が最大の注目点となるが、インバウンド需要は既に訪日外国人が2月に前年比6割減となったことが示す通り、大幅な落ち込みは不可避。1~3月期の輸出を前期比2%強、GDP成長率を0.4%Pt押し下げる見込み。また、各国の景気悪化により、財輸出は1~3月期にGDPを1%強、4~6月期には2%強押し下げると予想。外出自粛などの行動制約により、個人消費は1~3月期、4~6月期とも前期比で1%程度減少する見通し。そのほか、企業業績の悪化が設備投資の回復を遅らせ、雇用削減や賃金抑制圧力となって家計所得を下押しししよう。

政府は、昨年12月に決めた経済対策の実行を本格化させており、新型コロナウイルス緊急対応策第1弾、第2弾では感染拡大の防止や企業の資金繰り支援などにも対応。今後は、感染拡大防止措置に伴う支援対策や消費喚起を中心とする景気刺激策を打ち出す方針。ただ、景気が回復に向かう時期は、国内だけでなく海外も含めたコロナ感染の行方次第。仮に4月中に移動制限など経済活動の制約が緩和方向に転じるような状況になれば、1年後の東京五輪を目指して景気は順調に回復、新たな五輪の年となる2021年度は+2.1%と潜在成長率を大きく上回る高成長が期待できる。早期の感染終息を願うばかりである。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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