2020.08.31

中国経済情報2020年8月号

中国経済:回復ペースを左右する雇用と金融調節(7月主要指標)

7月の主要経済指標は、輸出が予想以上のスピードで回復、国内需要も個人消費が自動車販売を中心に拡大を持続、固定資産投資は不動産やインフラ投資から製造業に分野を広げて改善を続けるなど、緩やかながらも持続力を高めながら着実に正常化に向かっている。今後の中国経済の回復力を見極めるためには、雇用環境に加え、緩和度合いを調整し始めた資金供給の行方に注目。

伊藤忠中国拠点注目のトピック

トピック①:急成長するコールドチェーン市場

生鮮食品を低温に保ちながら輸送するコールドチェーン物流市場が急拡大している。技術力の低さや業界標準の欠如から中国のコールドチェーン流通率や輸送時の損失率は先進国より大幅に低い。新型コロナの感染拡大により、消費者の生鮮食品の安全性に対する関心も高まっており、政府はコールドチェーン強化を加速する姿勢を示している。具体的には、コールドチェーン物流拠点の偏在の解消や保冷技術の向上のほか、先端技術を用いた倉庫内作業の無人化やトレーサビリティシステムの導入などが進められている。

トピック②:存在感が高まる中国のユニコーン企業

「2020年ユニコーン企業ランキング」によると、中国はユニコーン企業数で米国に次ぐ2位で全体の4割を占めている。業種別には、世界全体の傾向と同じようにEコマースやAI分野の企業が多かった一方で、物流や健康医療のように中国国内で需要が高まっている分野の企業も多く見られた。また、北京は、中国国内のみならず世界でも最も多くのユニコーン企業が所在する都市に成長している。創業ブームが落ち着きを見せる中、これまで目覚ましい結果を見せてきた中国の「スタートアップ企業成長力」は持続可能なのか、引き続き動向が注目される。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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