2021.12.20

日本経済情報2021年12月号 改定経済見通し~2021年の回顧と2022年の展望

2021年の日本経済は、年初からの9ヵ月間のうち実に8ヵ月弱が新型コロナの感染拡大を受けた緊急事態宣言下となり、景気は落ち込みと持ち直しを繰り返し、東京五輪は無観客で景気押上げ効果は限定的、1年を通してみれば停滞が続いたという表現が適当であろう。

なかでも、飲食や宿泊などサービス分野を中心に個人消費の低迷が顕著であり、回復が先行していた輸出も、部品不足による自動車生産の落ち込みやコロナ感染再拡大を受けた海外景気の減速により、夏場以降は減少に転じた。こうした状況を受けて、設備投資も年後半には停滞した。

2022年は、国内においては、感染が抑制されていること、ワクチン接種が進んでいること、治療薬などの対策効果が期待できることから、コロナが経済活動を著しく制限する可能性は低下しているとみて良いだろう。海外においても、これまで同様、行動制限やワクチンなどにより年内にはコロナの影響を相当程度抑制できると想定した。

こうした前提に基づけば、既に過半が予算化・具体化された政府の大規模経済対策による後押しもあり、今後の日本経済は脱コロナに向けて本格的な回復に向かおう。先導役は、コロナ抑制を受けて持ち直しつつある個人消費であり、今後は賃金上昇もありマインドが改善、さらに積み上がった強制貯蓄の取り崩しも加わり、堅調な拡大が期待できる。

輸出も自動車生産は正常化しつつあり、年後半にはインバウンド需要が回復、増勢が続く見通しである。こうした需要の回復を背景に、ストック調整を終えた設備投資も再拡大が見込まれる。減少が続いていた公共投資も経済対策の効果から増勢に転じよう。

幅広い需要の回復により、2022年の実質GDP成長率は前年比+3.5%まで高まると予想する。経済活動(実質GDP)の水準は、2022年7~9月期にもコロナ前・消費増税前(2019年7~9月期)の水準を回復しよう。需給ギャップの改善や賃金の上昇が見込まれ、物価上昇圧力は次第に高まるが、日本においては川下への価格転嫁に時間がかかるため、2023年中までを展望しても、消費者物価上昇率が金融政策運営上の目標となる前年比2%に達することはなさそうである。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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副主任研究員 中浜 萌

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