2026.04.24

インフレ期待上昇と実体経済悪化への懸念強まる-日本経済情報2026年4月号

米国・イスラエルによるイランへの大規模戦闘作戦は、①原油価格の高騰を起点とする物価上昇、②逆資産効果を含めたマインド悪化による需要減、③原油関連製品の供給制約に起因する生産や設備投資の減少、④海外情勢の悪化を受けた輸出減、を通じて日本経済に影響。

3月時点では、原油価格高騰の国内物価への波及は限定的。消費者物価上昇率も主にガソリン価格上昇で0.2%Pt押し上げられるにとどまる。4月以降は物価上昇圧力が高まるものの、消費者物価は政府の補助金が続く限り上昇が抑えられる見通し。

ただ、「街角景気」や消費者マインドは、懸念が先行する形で大きく悪化している。さらに、春闘賃上げ率にも中東情勢による下押し圧力の可能性がある動きが見られることには留意が必要であろう。

一方で、3月調査の日銀短観が示す企業景況感は良好な状態を維持しており、設備投資計画も堅調。帝国データバンクのアンケート結果でも、企業のコスト増への懸念は強いが、サプライチェーンのリスクへの警戒は比較的少なく、設備投資への影響は小さい。

貿易面では、中東からの輸入の大部分が減少し一時的に貿易収支が改善、サービス収支も同様の動きが見込まれるが、長期的には価格上昇や代替輸入増のほか、インバウンドでは価格感応度の高い欧州、東南アジア、米国からの旅行客の落ち込みにより、収支は再び悪化しよう。

以上の通り、3月までに限れば原油価格高騰の波及は一部にとどまり、景気はマインド先行で悪化が見られたものの、個人消費者や企業の生産・投資活動、輸出など実体経済への影響は限定的。しかしながら、4月はインフレ期待が一段と強まる一方で、実体経済への悪影響も広がっているとみられる。そもそもイラン情勢がいつ、どのような形で決着するのか、全く見通しが立たないことが最大のリスク。

不確実性が高い状態が続くため、日銀が今月の決定会合で政策金利を据え置く可能性は極めて高くなったが、大幅な金融緩和を放置することのリスクも小さくはなく、「物価の番人」の判断が注目される。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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副主任研究員 高野 蒼太

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主席研究員 武内 浩二

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副主任研究員 北辻 宗幹

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