2022.12.21

日本経済2022年の回顧と2023年の展望-日本経済情報2022年12月号

2022年は、オミクロン株によるコロナ感染拡大、ロシアのウクライナ侵攻、国際商品相場の高騰、上海ロックダウン、欧米のインフレ加速と景気悪化などにより、想定外の展開となった。

日本経済に焦点を絞ると、年初から春先までは「まん延防止等重点措置」で欧米に比べ脱コロナ/ウイズコロナで出遅れ、対ロシア制裁の影響による物価上昇が個人消費の回復を遅らせた。その間、設備投資が堅調拡大を維持し景気を下支えした。

夏場のコロナ感染拡大が収束した後はウイズコロナに移行、政府の支援策もあり個人消費は持ち直すも、年末にかけては海外景気の悪化を受けてモノの輸出が減少。中国のゼロコロナ政策も混乱要因に。

2023年は、物価上昇と海外景気悪化という強い逆風に、コロナ感染再拡大や日銀の不透明な金融政策という懸念材料が加わる中で、景気腰折れを回避し経済活動の正常化と安定成長によるデフレからの完全脱却に挑戦する年となる。

以前から挙げている「景気が腰折れしない5つの理由」、すなわち①脱コロナに出遅れ、②欧米に比べ低いインフレ率、③金融緩和の継続、④企業の前向き姿勢、⑤インバウンド需要の回復、について点検すると、②インフレ率は足元で高まるも今後鈍化し賃金の上昇で概ねカバー。強制貯蓄もあり個人消費は拡大を維持。③金融緩和は12月19~20日に日銀が長期政策金利を事実上引き上げたため、その継続の可能性は低下。ただ、④企業の姿勢は、人手不足が極まり設備の不足感も確認され、雇用や設備投資の拡大積極化が期待できる状況。⑤インバウンド需要は訪日外国人数の復調に伴い回復の動き。

このように、想定外のインフレ率上昇や金融政策の変更があり、コロナ感染再拡大や中国を中心に不透明感を強める海外景気という懸念材料も加わったが、2次補正予算で具体化した「総合景気対策」の下支えにより景気は回復基調を維持する見込み。2023年は、終盤には需給ギャップが大幅に縮小、賃上げにより一定の物価上昇が続き、デフレからの完全脱却が展望できると予想。金利の本格上昇に備えるべき年に。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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副主任研究員 中浜 萌

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