2023.01.30

日本経済回復シナリオの再点検-日本経済情報2023年1月号

昨年9月、日本経済の先行きについて、①脱コロナ/ウイズコロナで出遅れていること、②欧米に比べ低いインフレ率、③金融緩和の継続、④企業の前向き姿勢、⑤インバウンド需要の回復、という5つの理由により、景気は腰折れせず回復基調が続くと予想した。以下、これらを再点検する。

理由①の脱コロナ/ウイズコロナについては、2022年10~12月時点でも米国やユーロ圏に追い付いておらず、それまでの平均成長率は0.5%にとどまっていることから、回復の余地は十分。

理由②のインフレ率は、今年1月に一段と高まるが、それでも欧米より低く、さらに今年度後半にかけて2%程度まで鈍化する見込み。一方で、賃金上昇率は2%程度まで高まり、物価上昇を概ねカバーする見込み。さらに、物価上昇率の鈍化が消費者マインドの改善につながり、強制貯蓄がリベンジ消費に結び付くと期待される。

理由③の金融緩和は、長期金利のさらなる上昇を日銀が若干は容認する可能性があるものの、物価安定目標の達成は当分見込めないことから金融緩和は継続、引き続き設備投資や住宅投資を後押しし続ける。

理由④の企業の前向き姿勢については、雇用拡大余地が乏しいため、人手不足は専ら企業に賃金上昇を促す形で個人消費の回復を後押しする。海外景気の悪化は企業に設備投資を一旦様子見させる恐れがあるものの、設備・人出不足や脱炭素、サプライチェーン見直しなどが引き続き設備投資の拡大を迫ると考えられる。

理由⑤のインバウンド需要回復は、水際対策の緩和を受けて訪日外国人数が既に着実に増加しており、中国のコロナ感染状況次第では加速も。

そのほか、海外景気の悪化を受けた財輸出の大幅減が景気下押し材料として懸念されるが、補正予算で具体化された政府の大規模経済対策がその悪影響を緩和する。そのため、日本経済は腰折れせず拡大基調を続けるとの見方を修正する必要はなさそうである。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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副主任研究員 中浜 萌

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