2023.04.24

根強いインフレ圧力と賃金上昇で金融政策は変わるのか-日本経済情報2023年4月号

足元の景気は、個人消費主導で着実に改善。景気ウオッチャー調査の景気現状判断(水準)は3月に2017年12月以来の水準まで回復、「家計動向関連」の50超が続く。ウイズ・コロナやインバウンド需要回復で飲食関連や旅行・レジャーなどのサービス関連が好調。

春闘賃上げ率は連合第4回集計でも3.69%と1993年以来30年ぶりの高い伸び。一部で懸念された中小企業も3%台、労働需給をより敏感に反映するパート賃金は5%台の上昇となり個人消費の追い風に。

もたつきの見られた設備投資にも復調の兆し。先行指標の機械受注は非製造業が急回復、建設着工床面積も1月以降は持ち直し。1月調査の「企業行動アンケート」で旺盛な企業の投資意欲を確認。

ただ、製造業の設備投資にブレーキをかけた財輸出は、欧米向けの落ち込みに加え、中国向けの回復が遅れており、3月も減少が続く。欧米景気は今後も当面停滞が続く可能性が高く、財輸出の回復は今年後半以降となろう。

一方で、サービス輸出の柱となるインバウンド需要は3月に訪日外国人数が一段と増加、順調に回復。中国本土からの訪日客は団体旅行の解禁見送りで回復が遅れているが、韓国・台湾・香港や米国が牽引。欧米やアジアの拡大余地あり、今後も増勢を維持しよう。

個人消費主導の景気拡大は、価格転嫁の進捗という形で消費者物価の上昇を促す。3月の消費者物価は、総合・コアで2月の前年同月比3%強から概ね横ばいも、コアコアは+3.8%まで伸びが加速。物価の基調を示す品目毎の上昇率の「最頻値」は2%を超えるなど、インフレ圧力は根強い。サービス分野では未だ価格転嫁余地も大。

こうした中、植田新体制で最初の金融政策決定会合を迎える日銀は、ひとまず現状維持とする可能性が高い。しかしながら、高まり続ける物価上昇圧力をどのように評価し、「展望レポート」で物価の見通しを修正するかどうか注目される。金融政策の点検・検証が開始されれば、それはYCC廃止検討のサインとみておくべきであろう。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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上席主任研究員 石川 誠

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副主任研究員 中浜 萌

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