2023.07.26

景気回復続き賃金は上昇するも金融政策は不変-日本経済情報2023年7月号

6月調査の日銀短観は企業景況感が幅広く改善したことを示す。帝国データバンクや内閣府の調査では6月に景況感の改善が足踏みしたものの、水準は依然として高く、先行きを悲観させる材料はない。

実体経済の指標を見ると、各種小売販売統計は気温上昇や外出増、インバウンド需要拡大により6月も総じて堅調、自動車販売や外食は増勢が一服するも、個人消費は拡大基調を維持している模様。

個人消費の先行きを左右する賃金は、今年の春闘賃上げ率が3.58%、うち中小企業は3.23%と、いずれも30年ぶりの高い伸びで着地。この結果を反映して5月に1.7%だった基本給(所定内賃金)の伸びは前年比2%程度まで高まる見込み。

景気回復を受けて雇用もサービス産業を中心に拡大、一方で労働力の供給余地は限られつつあるため、労働需給はひっ迫。これに物価上昇や企業業績の回復が加わり、来年度の春闘賃上げ率は今年を上回る可能性が高く、4%台も視野に入ると予想。実質賃金は1%程度の上昇を確保、個人消費を下支え。

なお、消費者物価は、エネルギー価格の上昇一服や輸入コスト上昇の転嫁一巡から伸びは鈍化するも、賃金の上昇が押し上げ要因となり、2%を割り込むことはない見通し。

内需のもう一つの柱である設備投資は、先行指標が機械投資の増勢一服を示唆しており、しばらく停滞。ただ、企業の投資意欲は旺盛であり、輸出が回復すれば再び増勢を取り戻そう。その輸出は、自動車生産の正常化により一時的に増加しているが、当面は停滞、欧米景気の回復待ち。インバウンド需要は回復を継続。

4~6月期の実質GDP成長率は、設備投資が減少に転じるも、個人消費と輸出の拡大により、前期比プラスを維持する見通し。

日銀は7月会合でも現状維持の可能性大。物価見通しの上方修正はあっても安定的な2%の上昇を確信するに至らず。市場の副作用もなく、YCC修正も見送り。ただ、物価上昇圧力は着実に強まっており、早ければ次回9月会合にも長期金利の変動幅拡大に踏み切ろう。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

執筆者紹介ページを表示

上席主任研究員 石川 誠

執筆者紹介ページを表示

主任研究員 中浜 萌

執筆者紹介ページを表示