2023.07.27

米国経済:底堅い景気の元でも、着実に進むインフレ鈍化

米国経済は、個人消費の増加が続いているほか、バイデン政権の経済政策の後押しにより設備投資も増加しているとみられ、底堅い状況が続いている。一方、こうした中でも、インフレ率は低下基調にある。財(モノ)の価格は、供給制約が解消したことで安定し、サービス価格も、賃金の伸びが高まりづらいことを背景に、上昇率が鈍化し始めている。FRBは必要に応じて追加利上げに踏み切る姿勢を維持し、景気の再加速がインフレ率の再上昇につながる可能性は排除されると見込む。ただ、これは同時に、過度な金融引き締めがなされるリスクを伴う。家計の実質可処分所得は、コロナ禍前と比べて低い水準にとどまり、コロナ禍で積み上がった家計貯蓄の取り崩しが続いている。この先、景気を支えてきた個人消費が減速に転じることが想定され、これに、金融引き締めの影響が加わることで、景気が想定以上に悪化する状況には引き続き注意が必要だろう。

執筆者紹介

上席主任研究員 髙橋 尚太郎

執筆者紹介ページを表示