2024.02.27

景気は後退局面にあらず、4月にマイナス金利解除(改定見通し)-日本経済情報2024年2月号

昨年10~12月期の実質GDP成長率は予想に反し2四半期連続の前期比マイナスとなったが、欧米の「テクニカル・リセッション」という考え方は日本では採用されていない。景気の基調を示す景気動向指数CI一致指数は少なくとも景気後退局面入りの可能性を示唆していない。

ただ、1月の経済指標も景気停滞を示すものが少なくない。12月に改善を見せていた景気ウオッチャー調査は、能登半島地震の影響もあり1月に再び悪化。個人消費関連指標も、1月は伸び悩んでいる。

一方で、消費者マインドは物価上昇の鈍化を受けて改善しつつある。今後の物価は、サービス分野で上昇が見込まれるが、財の価格上昇は一段と弱まり、さらに落ち着きを見せよう。さらに、今年の春闘賃上げ率は中小企業を含め昨年を上回るとみられ、賃金の上昇加速が期待される。そうなれば実質賃金は4~6月期にも前年比プラスに転じ、マインド改善と相まって個人消費の回復を後押ししよう。

インバウンド需要は1月も高水準を維持し、今後はペースを落としつつも拡大を続けよう。ただ、財の輸出は横ばいにとどまっており、輸出全体が景気押し上げに寄与するのは海外景気の復調が見込まれる今年半ば以降となろう。

設備投資は、機械受注が非製造業で回復、先行きは製造業の回復を示唆しており、建設投資も着工ベースでは回復しつつある。これら先行指標の動きを踏まえれば、今後の設備投資は、まず非製造業の機械投資中心に持ち直し、徐々に製造業や建設投資が回復していく姿が見込まれる。

以上を踏まえると、今後は個人消費や設備投資が回復に向かい、2023年度の実質GDP成長率は前年比+1.3%で着地、2024年度は+1.5%に伸びを高めよう。その結果、0.7%程度と試算される潜在成長率を大きく上回る状況が続き、2024年度初めには需給ギャップが解消、日本経済がデフレから完全に脱却する素地が需給面からも整うことになる。

こうした経済情勢を前提に、日銀は賃金上昇のサービス価格への着実な転嫁や春闘の結果を確認し、4月にマイナス金利の解除とYCCの撤廃に踏み切るという予想を維持する。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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副主任研究員 中浜 萌

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