2024.08.28

経済正常化に向けた動きを再開(改定見通し)-日本経済情報2024年8月号

4~6月期の実質GDP成長率は2四半期ぶりの前期比プラスとなったが、前期に落ち込んだ反動が大きく、前年同期比ではマイナスのまま。回復とは言えず、持ち直した程度との評価が妥当。

7月の消費関連統計は悪化が目立つが、前年より週末の数が少なかったことが主因であり、個人消費は数字が示すほど悪いわけではない。消費を取り巻く環境は、物価上昇の鈍化こそ足踏みしているものの、高い春闘賃上げ率を反映して所定内給与の伸びは高まり、消費者マインドも改善しつつある。今後は、電気・ガス代の補助金再開や円安修正により消費者物価上昇率は前年比2%前後に落ち着き、個人消費は実質賃金の増加やマインド改善を背景に拡大が続く見通し。

設備投資は、先行指標の機械受注が高水準を維持し、底堅く推移している。最近の円高進行による企業収益の影響は限定的とみられ、今後の設備投資は、需要や企業収益の拡大を追い風に、強気な投資計画が実行に移され堅調な拡大が続こう。輸出は、インバウンド需要の増勢が続き、足元で弱含んでいる財も年末頃から来年にかけて欧米景気の持ち直しにより拡大に転じるとみられ、増加基調を維持しよう。

日銀は7月30~31日の金融政策決定会合で大方の予想に反し利上げを強行、金融市場は円高株安が進むなど混乱した。ただ、市場が落ち着けば経済・物価情勢の改善に伴い利上げを継続する方針を再確認しており、当社は12月の追加利上げと来年度の利上げ継続を予想。

日本の金利上昇と米国の金利低下により為替相場は円高傾向となろう。また、金利上昇は住宅投資や設備投資を下押しするが、同時に家計所得を押し上げ個人消費にはプラスとなる。輸出は円高の影響を受けず海外景気の復調で増勢を取り戻す。今後の日本経済は安定的な物価上昇の下で一定の金利がある正常な状態への回復を再開しよう。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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主席研究員 宮嵜 浩

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