2025.01.28

景気回復の強い逆風となる物価上昇と円安-日本経済情報2025年1月号

景気ウオッチャー調査の現状判断DIは昨年末にかけて小幅上昇にとどまり景況感の改善は緩慢。個人消費と関係の深い「家計動向関連」で改善に遅れ。サービスは好調ながら飲食は頭打ち、小売の挽回は不十分。

政府は1月の月例経済報告でも「一部に足踏みが残るものの、緩やかに回復している」という景気の基調判断を据え置き。同報告で指摘された個人消費の伸び悩み、設備投資の持ち直し、住宅投資の停滞は経済指標でも確認。ただ、輸出はインバウンド需要が好調につき改善方向か。

10~12月期の実質GDP成長率は前期比年率1~2%程度のプラスとなった模様。内需は停滞気味ながら外需が押し上げ寄与。輸出の拡大に加え、輸入が食料品や鉱物性燃料、化学製品を中心に減少。すなわち、内需の減速は価格上昇の目立つ輸入品が中心で国内生産への影響はその分緩和されている、という解釈は可能。ただ、個人消費が全体として盛り上がりを欠くのは、物価上昇による逆風が強い面が大きい。実質賃金は11月にかろうじて前年比プラスとなったが、消費者マインドの低迷続き消費者の節約志向は根強い。

こうした経済物価情勢の下、日銀は1月23~24日の金融政策決定会合で物価見通しを引き上げ、利上げに踏み切った。前回12月に判断を留保した春闘賃上げやトランプ大統領就任の影響、輸入物価の動向を今回は見極めたとするが、12月時点と判断材料はさほど変わっておらず、利上げに慎重な印象が強い。こうした「ハト派」的な姿勢は、景気を刺激する反面、円安加速や物価上昇につながり得る点にも留意が必要。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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主席研究員 宮嵜 浩

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上席主任研究員 藤本 啓

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