2023.08.29

2025年度までの経済見通し~デフレ局面に終止符 -日本経済情報2023年8月号

4~6月期の実質GDP成長率は伸びが加速したが純輸出の拡大が主因であり国内民間需要は停滞。ただ、6月に悪化した景況感は7月には改善。7月の販売統計は小売・外食とも好調。

今後の個人消費のカギを握る賃金は、春闘の好結果を反映し上昇率が高まる傾向。来春闘ではさらなる賃上げ率上昇も。一方で消費者物価の伸びは鈍化が見込まれ、実質賃金の反転上昇とマインドの改善を通じて今後の個人消費の拡大を後押しする見込み。

設備投資は先行指標が当面の停滞を示唆するが、企業の投資意欲は旺盛、設備ストックの伸びは未だ低く投資拡大余地は大きい。今後見込まれる長期金利上昇は需要や利益の成長でカバーでき、設備投資は再拡大へ向かう見込み。輸出は、財が欧米景気の減速などにより今後の伸び悩みが懸念されるものの、インバウンド需要の拡大によりサービスが増加、景気の拡大に少なからぬ貢献をする見通し。

日銀は7月、金融政策を微修正したが、消費者物価の2%超は一時的との見方を維持。ただ、今後も労働需給は引き締まり、来春闘でも高い賃上げが見込まれるなど、2%の物価目標達成の確度は高まろう。当社は2024年4月にも現行の金融緩和は終了すると予想。

日本経済はデフレ局面に完全に終止符を打ち、個人消費を軸とする巡航速度の成長を探っていくこととなろう。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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