2024.05.29

金利上昇下で経済正常化に向けて再始動(改定見通し)-日本経済情報2024年5月号

2024年1~3月期GDP1次速報値は前期比年率▲2.0%と2四半期ぶりのマイナス成長。個人消費や住宅投資の減少が加速、輸出や設備投資も減少に転じた。個人消費は自動車など耐久財が大幅減、食料品など非耐久財も物価上昇で減少が続いたが、サービスは持ち直す。

4月の指標も総じて悪化。景気ウオッチャー調査では小売が一段と落ち込み、飲食やサービス関連も悪化。帝国データバンクの景気動向調査も2ヵ月ぶりの悪化。自動車関連を中心に製造業で悪化が目立つ。主な小売業態ではコンビニ、スーパー、百貨店とも伸び悩み、外食も伸びは鈍化。ただ、自動車販売は生産回復で持ち直しつつある。

今後の日本経済を展望するにあたり、金利上昇への耐性を確認しておく必要があるが、仮に今後1年間で政策金利が1%まで引き上げられ、長期金利が2%まで上昇すれば、企業は金利負担の増加もあいまって設備投資を抑制、家計は利子所得の増加で個人消費を多少増やすとしても、住宅投資が大きく落ち込む。これらを合わせるとGDPの0.7%に相当するマイナス・インパクトになると試算される。

ただ、利上げは景気拡大や賃上げを伴う「良い物価上昇」が前提であり、その場合、家計は所得増加で個人消費を拡大、住宅投資にもプラスとなり、企業は増益となり設備投資の落ち込みが緩和されよう。これらによるプラス・インパクトはGDPの0.5%程度とみられ、金利上昇の影響は差し引き0.2%程度にとどまる。実際には、利上げペースはこの前提より緩やかになり、景気の失速に至る可能性は低い。

今後は、春闘を反映し賃金上昇がさらに加速、物価上昇ペースは鈍化するため、実質賃金は上昇に転じ、個人消費は回復に向かう。設備投資は、足元で底堅さも見られており、当面は金利水準が低い中で増益基調に後押しされ拡大しよう。輸出はインバウンドの堅調拡大が続き、財も2024年終盤から2025年にかけて、欧米景気の持ち直しを背景に増加基調に転じると予想する。

その結果、実質GDP成長率は、足元2024年4~6月期に個人消費や設備投資の復調で前期比プラスに転じ、景気は回復に向けて再始動する。その後もプラス成長が続き、2024年度通年の成長率は前年比+1.2%と潜在成長率を上回り、政府がデフレ脱却の判断で重視する需給ギャップは早ければ7~9月期にも解消する。同じく単位労働コストは既に1~3月期に前年比+2.3%まで伸びを高めており、今年の夏頃には日本経済が正常化したと政府が判断できる環境は整う見込み。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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主席研究員 宮嵜 浩

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主任研究員 中浜 萌

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