2024.12.24

日本経済2024年の回顧と2025年の展望-日本経済情報2024年12月号

2024年の日本経済は、一時停滞感を強めたものの回復基調を維持し、3月にマイナス金利を終了、日経平均株価は史上最高値を更新、公示地価上昇率や春闘賃上げ率はバブル期以来の伸びを記録するなど、幅広い分野でインフレ経済への回帰が見られ、「デフレからの脱却」を実現。

それでも政府は、デフレに戻る可能性を残すとして「デフレ脱却宣言」を留保。ただ、条件に挙げた①賃金の持続的上昇、②コスト増の販売価格への転嫁、③サービスを含めた物価上昇の広がり、④安定的な物価上昇予想、はいずれもクリア。景気は年初に大手自動車メーカーの出荷停止などからつまずいた後、年央以降は個人消費の復調や好調なインバウンド需要により回復したが、2024年通年の成長率はマイナスに。円安や人手不足、海外景気の減速・停滞が逆風となり、デフレギャップを残した。

2025年は、年2回の利上げを想定。長期金利の上昇により行き過ぎた円安が修正されると予想。円安修正すなわち円高は物価上昇を抑えるが、輸出は為替感応度の低下により回復を妨げられず、非製造業のコスト減メリットは製造業への悪影響を上回り企業業績全体にはプラス。そのため、設備投資は金利上昇の影響を見込んでも拡大。

また、物価上昇の抑制は実質所得増とマインド改善を通じて個人消費の拡大を後押し。家計所得は、高い春闘賃上げ率に加え、女性中心に雇用の拡大が続くことから、高い伸びを維持。「年収の壁」引き上げ効果は学生アルバイトに限定されるため労働力の押し上げ寄与は限定的。

2025年の日本経済は、個人消費の拡大持続、海外景気の復調を受けた輸出の増加、設備投資の拡大により回復基調を維持する。金利上昇の影響により年後半は一時的な停滞の可能性はあるが、今年度補正予算で具体化された13.9兆円規模の経済対策が下支えし、成長率は1%台半ばまで高まると予想。

デフレギャップは解消し、デフレ脱却宣言が可能となるが、以降は潜在成長率が経済成長の天井となる。日本経済がある程度の成長を目指すのなら、次は潜在成長率の引き上げ、すなわち供給力の強化が課題となる。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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主席研究員 宮嵜 浩

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上席主任研究員 藤本 啓

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