2026.10.29

インフレ加速の抑制役を期待される「デフレ脱却宣言」 -日本経済情報2026年10月号

9月調査の日銀短観では、大企業製造業の景況感が6四半期連続となる改善。AI・半導体関連分野の需要拡大が牽引。非製造業は物価高や天候要因で小幅悪化したが、水準は高く景気は良好な状態を維持。

9月の「街角景気」も改善、家計動向関連に限っても4月以降の回復傾向を維持。「サービス関連」の回復が加速、「小売関連」も回復傾向を確認。ただ、「飲食関連」は悪天候などで8月に続き悪化。販売統計も踏まえると、7~9月期の個人消費は横ばいか小幅増にとどまった模様。

もう一つの内需の柱である設備投資は、先行指標が建設投資の低迷と機械投資の増勢維持を示唆。一致指標はソフトウエア投資の持ち直しを示しており、総合すると7~9月期に前期比増加に転じたとみられる。日銀短観では企業の積極的な投資計画や設備の不足感、極めて深刻な人手不足の状況が確認されており、設備投資の拡大を裏付け。

機械投資の拡大基調を支えるAI関連輸出は、足元7~8月も堅調拡大。半導体に加え、半導体製造装置なども増勢を強めている。今後についても、日銀短観の需給判断DIや機械受注が当面の半導体製造装置の需給改善を、業界統計が2027年以降の半導体や製造装置の需要拡大を示しており、日本のAI関連輸出の拡大も続くと予想される。

輸出拡大に支えられ設備投資も増勢を取り戻すとすれば、日本経済の拡大持続には個人消費の底堅い推移が見込めれば十分。その重要な要素である所得環境は来年度春闘も物価上昇や労働市場の逼迫を反映し5%程度の賃上げが見込まれ、物価はコスト上昇の価格転嫁で上昇が加速しているが消費税減税が実施されれば上昇は抑えられ、実質賃金が増加し消費の回復を後押しする。さらに、イラン情勢が年内にも落ち着けば、消費者マインドの改善が消費回復をより確実なものにしよう。

かように日本経済はデフレを深刻化させた負の悪循環から脱し、正常なインフレ経済を着実に取り戻しつつある。にもかかわらず、政府は未だ「デフレ脱却宣言」に慎重な姿勢を崩していない。物価上昇の加速という現実を軽視し、デフレ・リスクばかりを意識してインフレ・リスクに無防備な経済政策運営は、成長戦略の要となる投資を判断する際にも負の要素となろう。

執筆者紹介

チーフエコノミスト 武田 淳

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主席研究員 武内 浩二

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副主任研究員 高野 蒼太

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副主任研究員 北辻 宗幹

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